Not good enough:完璧主義
「もっとちゃんとできたはずなのに」
「失敗したらどうしよう」
「うまくいったけれど、まだやれたんじゃないかと思ってしまう」
こんな声が、頭の中に響くことはありませんか?
物事を上手くこなしたい、結果を残したい、と思う気持ちは、悪いものではありません。学んだり、大切なことに向かって進んだりする力になってくれます。でも、何をしても「まだ十分じゃない、満足じゃない」と感じてしまうと、うまくいったときでさえ、プレッシャーに変わってしまうことがあります。
思い当たる方は、もしかしたら完璧主義かもしれません。特に、自分の価値が「成果を出すこと」「ミスをしないこと」「周りの期待に応えること」と強く結びついているときは、そうなりやすいと言われています。
「高い基準」と「完璧主義」の違い
きちんとしている、責任感がある、向上心がある。それだけでは、完璧主義とは言えません。違いが出やすいのは、思い通りにいかなかったときの、自分への接し方です。
高い基準を持ちながらも柔軟で、自分のできたことをちゃんと認められる人もいます。一方で、いつも自分に厳しく、失敗を恐れ、どれだけ頑張っても「まだ足りない」と感じ続けてしまう人もいます。
研究者は、この2つを別のものとして捉えています。「高い目標を目指すこと」と、「失敗やミス、人からの評価を心配すること」です。416件の研究、成人113,118人分を統合したメタ分析では、不安・うつ・強迫症状と強く関連していたのは、「高い目標を目指す側」よりも「評価を心配する側」でした(Callaghan et al., 2024)。
つまり、うまくやりたいと思うこと自体が問題なのではありません。自分の価値が非常に高い基準を満たせるかどうかになっていて、代償を払ってでも追い続けてしまうとき、それが苦しさにつながります(Shafran et al., 2002)。
完璧主義は、どこから来るの?
原因は、ひとつではないことがほとんどです。生まれ持った気質、これまでの経験、自分に期待するよう教えられてきたこと、育った文化など、いろいろなものが関わっています。
たとえば、小さい頃に「よくできると認めてもらえる」=「安心できる」と学んだ人もいるかもしれません。あるいは、批判されたり、誰かをがっかりさせたりすることがとてもつらくて、ミスを避けるのが上手になった人もいるかもしれません。
アドラー心理学では、家族の中での役割に目を向けることがあります。たとえば、あなたが長子だったとします。責任感を持つこと、お手本になること、下の弟妹の面倒を見ることを期待されてきたかもしれません。「ちゃんとしなさい」「あなたはしっかりしないと」といった言葉を何度も聞いて育つと、「ミスは許されない」「自分のことは後回しにするもの」と思うようになることがあります。
ただし、生まれ順がその人の性格を決めるわけではありませんし、完璧主義の原因になるわけでもありません。 長子でもそうしたプレッシャーを感じなかった人はたくさんいますし、完璧主義はどの生まれ順の人にも見られます。大切なのは、あなた自身が家族の中での立場や関係をどう体験してきたかです。
トラウマインフォームドな視点
私は、完璧主義を「直すべき悪い癖」とは捉えていません。それよりも、「それはあなたのために、何をしてくれているのだろう?」と考えるほうが役に立つと思っています。
批判から自分を守っているのかもしれません。人間関係を良好に保つためかもしれませんし、少しでもコントロールできている感覚を持つためかもしれません。あるいは、誰かをがっかりさせないためかもしれません。
こうしたパターンは、必ずしもトラウマから来ているわけではありません。ただ、その背景にある物語を理解できると、判断ではなく好奇心を持って向き合いやすくなります。
カウンセリングでは、たとえばこんな問いについて話してみることがあります。
あなたにとって、ミスをすることはどんな意味を持っていますか?
完璧でなかったら、何が起こると心配ですか?
誰の期待に応えようとしていますか?
思うようにいかないときでも、自分の価値を感じられますか?
ゴールは、向上心をなくすことでも、すべての基準を下げることでもありません。成果やミスと自分の事をどう見るかとの結びつきをゆるめていくことです。
生活の妨げになり始めたとき
完璧主義は、心と体をすり減らすことがあります。ずっと続くストレス、先延ばし、決断のしづらさ、人間関係の緊張、何をしても満足できない感覚などが見られることもあります。
間違えるのが怖くて、なかなか取りかかれない人もいます。働きすぎてしまったり、何度も確認し直したり、「もっとやらなきゃ」と思って休めなかったりする人もいます。
強い苦しさがあったり、日常生活がつらくなったりしている場合は、誰かに話してみることが助けになります。認知行動療法(CBT)のようなエビデンスに基づくアプローチは、思い込みを見つめ直し、自分への厳しい批判をやわらげ、ミスや不確かさに対してもっと柔軟に対応できるようになる手助けをします。
よくやりたいと思いながらも、完璧でなくていい。そんなふうにいることはできます。
だから、問うべきは「どうすればもっと全部うまくできる?」ではなく
「期待にすべて応えられなくても、それも人間らしくいていいと、自分に許せるだろうか?」
SOEL Counselling & Wellnessでのサポート
SOEL Counselling & Wellnessでは、こうしたパターンを一緒に見つめ、その思考や癖がどこから来たのかを理解し、自分ともっとやさしい関係を築いていくための場をご用意しています。
カウンセリングが自分に合うか迷っている方は、20分の無料コンサルテーションをご利用ください。個人カウンセリングは、カナダにお住まいの方を対象に、日本語・英語で承っています。
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、専門家による助言・診断・治療に代わるものではありません。緊急の場合は、お住まいの地域の緊急サービスや相談窓口にご連絡ください。
参考文献
Callaghan, T., Greene, D., Shafran, R., Lunn, J., & Egan, S. J. (2024). The relationships between perfectionism and symptoms of depression, anxiety and obsessive-compulsive disorder in adults: A systematic review and meta-analysis. Cognitive Behaviour Therapy, 53(2), 121–132. https://doi.org/10.1080/16506073.2023.2277121
Shafran, R., Cooper, Z., & Fairburn, C. G. (2002). Clinical perfectionism: A cognitive-behavioural analysis. Behaviour Research and Therapy, 40(7), 773–791. https://doi.org/10.1016/S0005-7967(01)00059-6

